目次
1. 序論と研究概要
本研究は、リサイクルショップに関わる個人（購入者または寄付者として）の主要な動機付け要因を調査する。繊維廃棄物と持続不可能なファストファッションという緊急の地球規模の文脈の中で、リサイクルショップを単なる慈善事業の場としてだけでなく、環境持続可能性を促進する重要な主体として戦略的に活用する方法を明らかにすることを目的としている。取り組む中核的な問題は、リサイクルショップ参加の背景にある微妙な動機を理解する上でのギャップであり、これはその影響力を高め、循環型経済における役割を拡大するために極めて重要である。
研究目的： リサイクルショップの影響力と成功を高め、それによって環境持続可能性を向上させるために、買い物客と寄付者の動機に関する洞察を提供すること。
主要目標：
- リサイクルショップの概念と動機に関する過去の研究を分析する。
- リトアニアのリサイクルショップの寄付者と買い物客をアンケート調査により検証し、その動機を特定する。
- リサイクルショップへの一般市民の関与を増やすための動機付けに関する提言を提供する。
2. 文献レビューと概念的枠組み
2.1 繊維廃棄物の環境的緊急性
ファッション産業は主要な汚染源であり、世界の二酸化炭素排出量の約10％、工業用水汚染の約20％を占めている。膨大な量の繊維廃棄物が埋立地に捨てられたり焼却されたりしており、リサイクル率は極めて低い。これにより、製品ライフサイクルを延長するソリューションに対する差し迫った環境的需要が生じている。
2.2 リサイクルショップ：慈善事業から環境ソリューションへ
伝統的に低所得層を支援する手頃な価格の商品の提供場所と見なされてきたが、リサイクルショップはその環境機能のためにますます認識されるようになっている。それらは再利用を促進し、埋立地への廃棄物を転換し、新たな資源集約的な生産への需要を削減する。
2.3 動機研究におけるギャップ
人気が高まっているにもかかわらず、リサイクルショップ業界における購入者と寄付者の両方の動機付け要因を特に対象とした包括的な研究は依然として不足している。予備的研究は、経済的要因、社会的目的への支援、宝探しのような興奮、環境意識など、幅広い動機を示唆しているが、これらは深みと地域特有の詳細に欠けている。
3. 研究方法論
3.1 混合メソッド・アプローチ
本研究は、定量的データと定性的データを組み合わせた混合メソッド・デザインを採用し、全体的な理解を得た。このアプローチにより、アンケートデータからの統計的一般化と、インタビューからの豊かで文脈的な洞察が可能となる。
3.2 データ収集：アンケート調査とインタビュー
定量的： リトアニアのリサイクルショップ利用者と寄付者に対して300部の質問票を実施。
定性的： 異なる運営規模（小規模、中規模、大規模）を代表する3人のリサイクルショップ経営者への詳細なインタビュー。
4. 結果と主要な知見
主要動機の概要
購入者： コストパフォーマンス、独自の掘り出し物、探索の興奮。
寄付者： 利他主義、他者への支援、再利用の促進。
驚くべき知見： 環境持続可能性は、両グループにとって二次的な動機としてランク付けされた。
4.1 リサイクルショップ購入者の動機
買い物客の主要な動機は実用的かつ体験的である：
- 経済的価値（コストパフォーマンス）： 主要な動機であり、予算を意識する消費者に訴求する。
- 独自性と発見： 従来の小売では入手できない、特徴的、ヴィンテージ、または一点物のアイテムを見つける魅力。
- 「宝探し」体験： 探求と発見のプロセスから得られる興奮と個人的満足感。
4.2 リサイクルショップ寄付者の動機
寄付者の行動は、主に向社会性と実用的配慮によって駆動される：
- 利他主義と恵まれない人々への支援： 必要な人々に手頃な価格の商品を提供することで社会福祉に貢献したいという欲求。
- 利便性と廃棄物削減： 散らかりを解消し、アイテムが廃棄されるのではなく再利用されることを確実にしたいという実用的な欲求。
- 目的への支援： リサイクルショップ組織の慈善的またはコミュニティの使命との一致。
4.3 環境持続可能性の二次的役割
重要であり、やや直感に反する知見は、環境持続可能性がどちらのグループにとっても主要な動機ではなかったことである。認識はされていたが、それは中核的な駆動力ではなく、支持する論拠として機能していた。これは、リサイクルショップの潜在的な環境影響と、消費者・寄付者のその影響に対する認識または優先順位との間に大きなギャップがあることを示している。
5. 考察と戦略的示唆
5.1 中核的動機に合わせた運営
リサイクルショップは、特定された主要な動機に戦略的に対応しなければならない：
- 購入者向け： 認識される価値を維持するための価格戦略の管理、「宝探し」を強化するための商品構成の企画、より良い探索のための店舗レイアウトの改善。
- 寄付者向け： 寄付プロセスの合理化、寄付がどのようにコミュニティを助けるかを明確に伝えること、便利な持ち込みオプションの提供。
5.2 持続可能性に関するコミュニケーションギャップ
本研究は、戦略的コミュニケーションの緊急の必要性を明らかにしている。リサイクルショップは、その環境的役割について一般市民に積極的に教育しなければならない。これには、環境便益を定量化しメッセージングすること（例：「この購入でX kgのCO2を削減」）が含まれ、これは他の産業で見られるライフサイクル評価コミュニケーション戦略に類似している。これは、持続可能性を二次的な動機から主要な動機へと高めるのに役立つ可能性がある。
6. 分析フレームワークと事例
アナリストの視点：中核的洞察、論理的流れ、強みと欠点、実践的示唆
中核的洞察： リトアニアのリサイクル市場は現在、イデオロギー的動機（地球を救う）ではなく、取引的および感情的動機（お金を節約する、気分が良くなる）によって動かされている。環境的価値提案は、棚に置かれた未活用の資産である。
論理的流れ： 本研究は、マクロの問題（繊維廃棄物）を正しく特定し、ミクロの解決策（リサイクルショップ）を提案し、行動のエンジン（動機）に掘り下げている。その論理連鎖は堅固である：解決策を拡大するには、参加を促進するものを理解しなければならない。混合メソッド・アプローチは、「何が」（アンケート統計）と「なぜ」（インタビューのニュアンス）の両方を提供する。
強みと欠点： 強みは、購入者と寄付者の動機の明確で実践的なセグメンテーションにあり、これは店舗管理者にとって即座に有用である。主要な欠点は、その地域的限界（リトアニア）にある。米国や西ヨーロッパのような成熟した中古市場では、「リサイクルショップ利用」がしばしばライフスタイルの選択であるため、動機は大きく異なる可能性が高い。また、本研究は潜在的な阻害要因（例：スティグマ、衛生上の懸念、時間コスト）に言及しているが、戦略にとって同様に重要なこれらを深く探求していない。
実践的示唆： リサイクルショップ運営者にとって、手順は明確である：中核的価値に集中せよ。 購入者向けには、より良い視覚的マーチャンダイジングとソーシャルメディアでの独自の掘り出し物の紹介を通じて宝探しを増幅する。寄付者向けには、寄付をオンラインショッピングの返品と同じくらい簡単にする。決定的に重要なのは、「環境影響」マーケティングキャンペーンを開始することである。アイテムごとの炭素/水節約量のような単純な指標を計算し、すべての商品にそれをタグ付けすることで、抽象的な便益を具体的な特徴に変える。ファストファッションブランドと回収スキームで提携し、寄付をあらゆる衣類の「かっこいい」エンドオブライフとして再定義する。
7. 将来の応用と研究の方向性
- 技術統合： リサイクルショップでの購入/寄付を通じて個人的な環境影響（例：削減された炭素フットプリント）を追跡するアプリを開発し、持続可能な行動をゲーミフィケーションする。
- クロスセクター・パートナーシップ： リサイクルショップがファストファッションブランドと公式のリサイクル/再形成プログラムで提携し、クローズドループシステムを創出する。
- 製品ライフサイクル分析（LCA）ツール： 簡略化されたLCAを実施して、消費者にアイテムごとの定量化可能な環境節約を提供する。これはISO 14040シリーズのようなフレームワークで支持される概念である。
- グローバル比較研究： 異なる文化的・経済的文脈に研究を拡大し、リサイクルショップ関与動機の普遍的なモデルを構築する。
- 行動ナッジ研究： 店舗レイアウト、価格の手がかり（例：「地球を救う価格」）、メッセージングが、中核的な経済的動機を損なうことなく、消費者をより持続可能な選択へとどのようにナッジできるかを調査する。
8. 参考文献
- Beniulis, S., Rafijevas, S., & Razbadauskaite-Venske, I. (n.d.). Thrift Stores as Environmental Solution: Motivators of Buyers and Donors. Journal of Sustainable Business.
- Conca, J. (2015). Making Climate Change Fashionable - The Garment Industry Takes On Global Warming. Forbes.
- Graham, H. (2021). The Environmental Crisis in Your Closet. Bloomberg Green.
- Park, H., et al. (2020). Motivations for Patronizing Thrift Stores: A Comparative Study. Journal of Consumer Behaviour.
- Selmys, M. (2016). The Socio-Economic Role of Modern Thrift Stores. International Journal of Nonprofit Sector.
- ISO 14040:2006. Environmental management — Life cycle assessment — Principles and framework. International Organization for Standardization.
- Ellen MacArthur Foundation. (2017). A New Textiles Economy: Redesigning Fashion's Future. https://www.ellenmacarthurfoundation.org/